2019年02月27日

夜逃げ・5









「……今になって、……どういうつもりなのでしょうねぇ…」


事務所で。
一通り仕事を終えて、一ノ宮がため息を付く。
水割りのグラスを二つ持ち、ソファに座る黒川に一つ渡すと、自分はその向かいに座る。
光州会からは、度々、イツキを出せと、まるで借金取りのような催促が入る。
勿論、そこいらの借金取りよりタチが悪い。


「……イツキくんの事は、今までだって知っていたでしょうに。……代が替わったからと言って、こうも急に来れれると、参りますね…」
「……笠原の時に、…あの場にいたらしいぜ、高見沢の奴。イツキも、目立ちすぎたな…」


それは先日の、嶋本組の宴席での事。
若頭補佐の笠原が、イツキを巡り、黒川と大立ち回りを演じた場に…高見沢もいたと言うのだ。


「……逃した魚はデカかった…っとでも思ったのか…、……馬鹿め…」
「ああ、それは…、確かに…」


一ノ宮の同意に、黒川は思わず厳しい視線を向ける。

その道で名を売り、仕事を続けて行く分には良いだろうが…、…そうではないと、厄介なだけだ。

いちいち誘いを断るのは面倒すぎる。そんな義理も無いのではないかと、思い始める。
まだ、黒川にしても完全に、イツキを護る覚悟は…決めかねているようだ。




丁度、その時、イツキからの電話が入る。
一ノ宮の手前もあるのだろうか、事務的な連絡を2,3して、不愛想に相槌を打つ。

最後は半ば声を荒げ、「………そんな事、知るか!………大人しく、隠れていろ!」と吐き捨て、電話を切る。




切ってから、黒川はまた溜息を付く。
一ノ宮も困った顔をして「……どうしたものですかね…」と、零すのだった。






posted by 白黒ぼたん at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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