2019年02月28日

夜逃げ・6







当然、ホテルに潜伏中は、誰とも連絡を取るな、居場所を教えるな、とキツく言われていた。
イツキとて、状況は解っている。せっかく逃げ隠れているのに、相手に見つかっては元も子もない。



『……ごめん。今、ダメ。……俺、ちょっと…忙しくて……』

と、梶原からの電話は、素っ気なく断ってみた。
佐野からも、何度か、飲みの誘いがあった。…佐野ですら、事情を知らないのだろうか…、これも、やんわりと、お断りする。

それでも、無碍に切り捨てられない相手がいた。
すでに新宿を離れてから2週間。頃は、4月の半ば。
5月に、大切な約束があったのを、イツキは忘れてはいなかった。




『…イツキちゃん。明日、新店舗のミーティングがあるんだけど、来られるかな?』

電話は、ミツオからだった。
イツキは5月から、ミツオの店で、きちんと、働くつもりだったのだ。



『……ごめんなさい、ミツオさん。俺…、……仕事、……出来なくなっちゃった』
『えっ、何、どうして?………あの人に、反対された?』
『そうじゃないんだけど。……でも、ちょっと、ワケがあって……』



話をしながら、イツキは、鼻水をすする。実を言えば、美容院で仕事が出来ることを、楽しみにしていたのだ。
しかし、いつ、あちらに戻れるのか、いつ、自身の安全が確保されるのか、一向に解らないままでは…、仕事も何も無いだろう。



『……ごめんなさい…』



けれど、ミツオは簡単には引き下がらなかった。





posted by 白黒ぼたん at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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