2019年03月03日

夜逃げ・8








『…群馬に、知り合いの会社があって、美容用品とか扱うトコなんだけど…』
『……え?群馬!』
『…そう。…ん?……イツキちゃん、今、群馬にいるの?』


あえて居場所は伏せていたのに、あっという間にバレてしまう。


『…それなら丁度良かった。…うん。…小さい会社だけど、ウチの美容院のノベルティとか作ってもらってるトコで…、ほら、イツキちゃんが箱詰めした石鹸とか……』


ミツオの話では、その会社は昔からの付き合いがある所で、社長とも懇意にしている所で。
実を言えば遠い親戚筋で、ともかく多少の無理が効く所で。
もし、そこで仕事をする気があるのなら、相談に乗れるという事だった。


『………あ。…ありがとうございます。…でも、俺、まだそこまでは考えてなくて…』
『うん。だから、保険。もし、どうしても困ったら、思い出して』
『…ありがとうございます』




そんな事を話して、電話は切れた。
一方的に、予定していた仕事をキャンセルしたというのに、ミツオは優しく対応してくれた。
その優しさが、今のイツキには特に身に染みる。
そして、あまりにも優しくない男の事を思い出させた。

確かに今は、身を潜めていた方が良いのかもしれないけれど
あの男は、このまま自分を放っておく気ではないのだろうか…とさえ思う。
先行きの不透明さが、一層イツキを、憂鬱な気分にさせた。








それでも、黒川も何もしていない訳ではなかった。
ようやく光州会の高見沢と直接会うアポイントが取れ、一ノ宮と一緒に、指定された場所に向かっていた。

都内のビルの上階にある、小さなクラブ。
「女」の話をするには、組の事務所よりもこんな場所の方が良いと、お互い思っていた。

店内に客は数名。みな、高見沢の手の者だろう。
簡単な挨拶を済ませると、黒川は一人、奥のボックス席に通された。






posted by 白黒ぼたん at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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