2019年03月08日
夜逃げ・10
「いい加減にしろよ、高見沢さん。岡部の件は、俺と先代との間でカタが付いている。
光州会は、今後一切、岡部には関わらない。それが、男と男の約束だぜ?
それを、ないがしろにする気かよ?
先代の決め事にケチを付け、反故にして……、……あんた、そんな所で力をアピールしている場合じゃないだろ?」
「……どういう意味や?」
「……大人しく、先代のやり方を踏襲していた方がいいって事だ。
あんたが先代をコケにしているとなれば、それを逆手に、騒ぐ奴らもいるんだろう?
…代替わりで揉めるのは、…よくある話だよなぁ…」
黒川は声を荒げるでも威嚇するでもなく、ただ静かに、淡々と話す。
回りくどい説得は性に合わないが、腕っぷしでどうこうする話でもない。
岡部の件を蒸し返すのは、高見沢が先代を馬鹿にしている事になるのだと、思わせればいい。
黒川はグラスの酒を飲み、高見沢も、酒を飲む。
元々、無理な喧嘩を吹っ掛けている自覚はあるのだ。黒川に言われた事は、あながち間違いではないと知っていた。
とは言え、出した手は、なかなか引っ込める事も出来ない。
高見沢は小さく唸り、空になったグラスをテーブルに置く。
そのグラスに、黒川が酒を注いだ。
「……まあ、…高見沢さんの言い分も解りますよ。
……ふふ、ウチも岡部には、エライ迷惑を掛けられたんでね……」
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