2019年03月16日

普通のおばさん



社長は気の良いおじさんで、夫人も気の良いおばさんだった。



「……ミツオちゃんは甥っ子のお嫁さんの、弟さんでね、まー同じような、オシャレ関係な仕事でしょ? 前から付き合いはあってね。
でも、ほら、ウチはこんな田舎の小さな工場でしょ、5年くらい前に行き詰って、どうにもならなくなって…。
でも、その時にミツオちゃんが助けてくれたのよー。都内の美容室に置かせてもらってるオーガニックのクリームなんかも、その時のでね…」



のんびりとした昼下がり。
社長夫人とイツキは作業で手先を動かしながら、そんな話をする。



「だから、恩人ってワケ。それだもん、ミツオちゃんの頼みは断れないわよね。
ああ、でも、来てくれたのがイツキちゃんで良かったわー。
こんなカワイイ子! 働き者だし!」

「………いえいえ…」



夫人にしても、突然、見ず知らずの少年を雇って欲しいと頼まれ、戸惑いはあったようだ。
それでも、この2,3日で、すっかりイツキを気に入った様子だった。
やや歳が入ったご婦人特有の人懐っこい口調でイツキを褒め、イツキは耳まで赤くしてしまう。




「……住むところまでお世話になって、助かっています。ありがとうございます」
「いいのよー、困ったことがあったら何でも言ってね、あ、今度、ウチにご飯食べにいらっしゃい。ウチも息子がいるんだけど、もう家に寄り付かなくてね…年寄り二人、寂しい暮らしなのよー」
「………ありがとうございます」



良い人、というのは解るが、若干、押しが強いのが…、……イツキには慣れない。
考えてみれば今まで、「普通のおばさん」に接した事が無いのだ。

善意にどこまで甘えていいのか、替わりに、何かを差し出さなければいけないのか

どれが正解なのか、イツキには解らない事だらけだった。





posted by 白黒ぼたん at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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