2019年03月19日

小森さん







イツキは、イツキで
電話は、黒川がかけてくるべきだと、思っていた。

言われた通り身を潜めているし、居場所は一ノ宮に伝えてあるのだし
後は黒川が折れ、『大丈夫か?様子はどうだ?悪かったな』と連絡を入れるべきだと思っていた。

けれど同時に、……黒川はそんな事はしないとも、……知っていた。








「…………ばか…」

待っている訳でもないが、つい時間が空くと、スマホをチェックしてしまう。
案の定、何の通知もなく、イツキは小さく溜息と悪態を付いた。




「…何か、…待ち?……イツキくん」
「あ。……いえ、何でも無いです……」


向かいに座っていた小森が声を掛ける。
40代パート主婦。最初は、仕事に厳しい、怖い印象の女性だったが…慣れて来たのか少し柔らかい笑顔を見せるようになった。


「そう言えばイツキくんって、……ショウジさんの紹介なんだって?」
「……え?」
「庄司光男さん。東京で美容師やってる…、違った?」
「えっ、……ああ、ええっと。はい、そうです、ミツオさんに紹介して貰って……」


キスもしてセックスもして、一緒に仕事もして、新しい仕事も紹介して貰ったと言うのに
イツキは、ミツオの上の名前を、初めて聞いたのかも知れない。


「……小森さんは、ミツオさんと、お知り合いなんですか?」
「前はよく、ココにも顔出してくれたのよ。彼、どう?相変わらずイケメン?…口元に、オシャレ髭、ある?」
「……ええ。……はい」





小森は、ミツオの髭の話をしながら、自分の顔に手をやり笑う。
イツキは、何を思い出したのかは知らないが急に恥ずかしくなって、気付かれないようにと必死に誤魔化すのだった。





posted by 白黒ぼたん at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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