2019年04月05日
イツキ・3
「あ、林田さん。おはようございまぁす。なんか、久しぶりじゃないですかー?」
ミカの声でイツキも顔を上げる。入り口では林田が、どこか落ち着かない様子で立っていた。
先週末、林田とうっかり関係を持ってから、会うのはこれが初めてだった。
「……はよ。ミカちゃん。……イツキくん。………えーと、……社長は?」
「いませんよー。小森さんと外回りです」
「あ。そうなんだ。……えーと…、じゃあ……」
「待っててくださいよ、すぐ戻ると思います。…お茶、入れますね」
そう言ってミカは席を立ち、部屋の奥の給湯室へ向かう。
本当は帰ってしまおうかと思った林田は苦笑いを浮かべ、意味も無く頭の後ろなどを掻き、咳払いなどをする。
「………林田さん」
「……んっ?」
イツキに呼ばれ、林田は裏返った声で返事をする。イツキは小さく笑う。
「………俺、この間は…、酔っぱらっちゃって……、変な感じになっちゃって…、ごめんなさい」
「あ、…ああ。いや、俺も、ごめん。……なんか…、あの、…その…」
「………無かったコトに、………します?」
「…あ、………うん……」
「え?ナニナニ? 何の話ですかー? ……はい、しあわせ堂のシュークリームですよー」
絶妙のタイミングでミカがお茶を持って戻り、イツキはシュークリームに釘付けになってしまう。
林田は、……本当は「無かった事」にしたかったのか、したくなかったのか……、自分でも、良く解らないでいた。
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いっちゃん見るたびに、蘇るあの時の…
どうなるー?
林田…、お気の毒……www