2019年04月13日
イツキ・最終話
「………どうしたの、イツキくん。……眠い?」
「………いえ、……いや、……ええ、……そうですね…」
仕事に身が入らず、大あくびばかり繰り返すイツキに、ミカが笑いながら尋ねる。
つい数時間前まで黒川と一緒にいたこんな日は、勿論眠たくて気だるくて、外に出られる状態では無いのだが
まだ、ここでの生活に気を使ってるのか、イツキはどうにか出社だけはしていた。
「…あたしも。夕べ、動画見てたら止まんなくなっちゃった。……フフフ」
ミカはそう言って笑い、眠気覚ましのコーヒーを淹れに席を立った。
本当は一緒に帰りたいと。
多少、身の危険はあっても、黒川と一緒にいたいと
泣いてすがって、言えば良かったのかと……イツキは半分、思っていた。
それでも半分は、……そんな状況を黙認している黒川に怒っていたし
安全で、自由で、自立できるこの生活に、期待している部分もあった。
こんな風にでもないと、黒川と距離を取ることなど、出来ないだろう。
永遠の別れではない。黒川は、「また来る」と言う。
ちゃんと、自分に会いたくて、来てくれるのだ。
会いたくて。
「はーい、コーヒー、入りましたよー」
「ミカちゃん、俺、今日、大福持ってきたんだ。一個、あげる」
「本当? 嬉しい!」
黒川が持って来てくれた塩豆大福を、ミカと一緒に食べる。
イツキは、しばらくここで頑張ろうと、覚悟を決めていた。
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