2019年04月15日
黒川・1
「どうでしたか?イツキくん、元気にやっていましたか?」
「…ああ、…そうだな…」
イツキのアパートから事務所に戻り、黒川はいつも通り事務所で仕事を片付ける。
一ノ宮は、ようやく重い腰を上げた黒川に、アレコレ話を聞いてみたかったのだが…、そう簡単に話はしてくれない。
不愛想に短く返事をするのは、照れ隠しだとは、知っている。
「少し、ゆっくりされれば良かったのに。あの辺り、山間に入ると温泉宿もあるようですよ。今度はそちらに行かれては…」
「……いらん。…動き回って、足取りを探られては、元も子もないだろう。…イツキはしばらく、放っておく」
「……へえ…」
あまりに素っ気ない返事に、一ノ宮は呆れたように声を上げ、これ以上詮索は無駄だと諦める。
自分の仕事を手早く済ませ、後は外の用事があるからと、先に事務所を出て行ってしまった。
一人残った黒川は、大きく溜息をつく。
デスクを離れ、部屋の隅の冷蔵庫からビールを取り、ソファに座る。
缶を開け、煽る。センターテーブルに足を投げ出す。
最近は、ここに居る時間が増えた。睡眠すら、このソファで済ませてしまう。
……マンションに戻っても、どこか落ち着かず居心地が悪い。……その理由は、簡単だった。
「………クソ。……あいつも意地を張りやがって。……帰りたいと、泣き付きでもすれば…、………連れて帰ってやるのに………」
ビールを飲みながら、愚痴を零す。
単純に、黒川は、イツキが自分を頼らない選択をしたことが、不満だった。
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お互い意地っ張りですね。
黒川さんが折れてくれないと…ねえ
ここはいっちゃんがオトナに…
……これ以上!?