2019年04月17日
黒川・2
「……イツキ、社長んトコから逃げたって本当ですか?……ここんとこ、連絡も付かないんですよねー…」
「今、一緒にいない事は確かだな。…ふん、さんざん面倒かけて、結局ドロンかよ……」
「いやー、でも本当なら、社長が放っておきますかねー?……あれでいて、イツキにゾッコンLOVEじゃないっすか………」
少々古臭い単語を交え、西崎と佐野は事務所でウワサ話。
イツキが姿を消したことは皆に知られるようになったが、西崎や佐野ですら、その真相は解らなかった。
「…うーん。だから社長、最近、様子が変なんですかね。勢いが無いっつーか。……寂しいんじゃないっすかねー、………夜が」
そんな事を言って、佐野が下品にクスクス笑っている最中、ドアが開き、黒川が入って来る。
佐野は、話を聞かれたかと、ぎょっとした顔をして…慌てて姿勢を直し、仕事をしているフリをする。
西崎が頭を下げる。
「……お疲れさまです、社長」
「ああ。西崎、裏のゲーム屋の件な、500万で手打ちだ。明日、書類を作りに行く。あと横浜の事務所に若い奴を回してくれ、2,3人……」
黒川は持って来た封筒をガサガサと開いて、仕事の話をいくつかする。
特に変わった様子は無いようだ。むしろイツキがいない分、仕事に身が入る様になったのではないかと、西崎は思う。
「…社長、今日はこの後、どうされます?……「花うさぎ」のママが、折り入って話があると言ってましたぜ?」
「どうせ新店の援助の話だろ?……また今度な、今日は帰る」
手早く用件を済ませ、明日の予定を立て、じゃあな、と黒川は西崎の事務所を後にする。
佐野は立ち上がり、黒川の前でドアを開け、お疲れ様でしたと頭を下げる。
黒川は、その頭を、拳で軽く小突くのだった。
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