2019年04月20日

黒川・5








「会いに行かれたのでしょう?イツキくんに。元気でやっていましたか?」
「……ふん。……危うく、新聞屋を部屋に上げる所だったぜ、あの、馬鹿」
「もうそろそろ、連れて帰るのかと…、思っていたんですが…」
「……暫く、この状態でいいだろう。……誘いを断るにも、楽だしな」


焼き鳥の盛り合わせと、安い本醸造の冷や酒。
カウンターしかない小さな店で、肩を寄せながら飲んでいると、つい、本音が零れてしまう。


「……あなたが、寂しいのではないかと、……思いましたよ」
「……………ふん」


否定も肯定もせず、黒川は鼻息を鳴らす。
吸っていた煙草を灰皿に押し付け、一ノ宮と自分のグラスに、新しい酒を注ぐ。



「……良くも悪くも、あいつとは、馴染み過ぎているからな。……ここいらで少し、距離を取るのもいいだろう……」
「案外、イツキくんには、いい気晴らしかも知れませんね。ずっとあなたの傍では息も詰まるでしょう」



黒川自身、そんな風に考えたことは無かったようで、一ノ宮の言葉に軽く驚き、思わず一ノ宮を二度見する。
確かに、自分の傍にいることがイツキにとって最良の状態なのだとは、お世辞にも言えない。



「……このまま、別れ離れ、……なんて。……どうします?……そんな事になったら」


「……あの馬鹿が、……一人で生きて行けるかよ。
どうせすぐに悪い男に捕まる。

……やる事が一緒なら、……俺が、……やる。………イツキは、俺が捕まえたんだからな…」





そう言って、黒川はグラスの酒を空にする。




今日は少し、飲み過ぎていた。









posted by 白黒ぼたん at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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