2019年04月22日
ミツオ・1
イツキが働くハーバルの作業所に、ミツオが来ていた。
系列の美容室で扱う新しいヘアオイルのサンプルを受け取りに…らしい。
軽く頭を下げて、中に入り、さらに社長がいる奥の部屋に入る。
イツキも頭を下げ、小さく微笑む。ミカは、ミツオの名前だけは知っているが、初対面だったようだ。
「……あの人がミツオさんなんだ?……恰好良いねー。ウチの商品のアドバイザーなんでしょ?……美容師さん?……やーん、髪、切って貰いたいー」
騒ぐミカを横目に、イツキはあえてだんまりを決め込む。
何をどこまで話して良いのか解らない時は、とりあえず何も言わない方が良いと、多少は学んだようだ。
「先日のオーガニックシリーズ、好評でしたよ。香りも丁度良くて…でも、オイルはもう少し軽めになると良いですね」
「今度のは良いと思うよ。…やっぱり天然ものは、季節でバラつきがあってねぇ…」
社長とミツオがサンプル品を並べ、アレコレ話をしていると、パートの小森がお茶を運んで来る。
小森は、ミツオと面識があるようだ。「……久しぶり」と、幾分親し気に声を掛けた。
「……いや、でも。……今回は本当に、社長にはお世話になって……」
「……うん?」
「……イツキくんですよ。……急な頼みだったのに、快く受け入れてもらって…」
「ああ、いやいや、良い子で助かってるよ。真面目で、細かい仕事も得意でね…」
二人が小さな声で話すのを、小森は傍耳を立て、聞く。
ミカにはさんざん、イツキの事で騒ぎ立てるな…と言っているが、…こんな場所に急に働きに来るようになった少年が、気にならない訳はない。
まして、ミツオの紹介なのだ。
小森はチラリとミツオを覗き視線「を送る。
ミツオはそれに気づかなかったようで、細くて長い指先で、サンプル品のボトルを開け閉めしていた。
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