2019年05月09日
林田、驚く・1
「えええっ…、社長…、ギックリ腰ですか……」
夕方。ハーバルにやって来た林田は悲鳴にも似た声を上げる。
今日はこれから、大手の取引先を招いての食事会を予定していた。
来月開催される物産展に向け、新規に開拓したルートで、今回が上手く行けば、さらなる販路拡大が見込まれる所だった。
「………いや、……大丈夫…、……行く…から……」
初老の社長は腰を押さえ、壁伝いに数歩動いては、イテテと言って立ち止まる。
どうやら昼過ぎに重たい段ボールを抱えて、うっかり、やってしまったそうなのだ。
「そんなお身体じゃ無理ですよ。…ああ、でも今日の席はちょっと…外すとヤバイやつですよね…。ああ、ど、…どうしましょう。……奥方は?」
「……家内も…今日は別用があって……」
「この際、誰でも…。小森さん、とか…行きませんか?」
困った様子で林田は小森に話を振るも、小森は、子供の世話があるからと素っ気なく首を横に振る。
「…ミ…ミカちゃんは…っ?」
「あたし無理です。今日は2か月ぶりのマツエクなんです。やっと予約が取れたんですよー」
「…ええっ、……ハーバルの危機なんだよ?」
取引先との接待の席など、当然、気乗りはしないのだろう。
女子二人は無碍に断り、定時だからと帰り支度をし始める。
社長は「…大丈夫、…私、行くから…」と、微塵も大丈夫な様子を見せずに、痛みを堪えて上着を羽織る。
「………俺で良ければ…、……行きましょうか…?」
部屋の端で話を聞いていたイツキが小さく手を挙げた。
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どうなるんですかー?
いっちゃんに出来る事なんて…アレしか無いですよねー笑笑
きんぎょさま
いつでもどこでも危なっかしい子です。それでいて自分では大丈夫、って思ってるんですよねー。