2019年05月09日
林田、驚く・2
「助かったよ。ハーバルさんの商品を売り込むのに、ハーバルさんがいないんじゃ話にならないからね…」
「でも、俺、何も出来ないですよ?…座ってるだけでも良ければ…」
「いい、いい。来てくれたって気持ちだけで…」
イツキは林田の車に乗り、仕事場を出発する。
もののはずみでセックスしてしまった二人。多少、気まずさが残ってはいたが、この窮地にそれも吹き飛んだように思う。
あの夜の事は無かった事。酒の勢いで少し…、じゃれ合いが行き過ぎてしまっただけの事。
「…社長には、お世話になってるから。…こんな事で、役に立つなら…」
そう言うイツキを、林田は横目で眺め、ああ、この子は本当に素直で良い子なんだと…思う。
無邪気と無防備と隣り合わせの危うさには、まだ気が付いていない。
「…………おお……う…」
さすがにカジュアル過ぎる格好ではまずかろうと、林田は途中、イツキのアパートに寄る。
聞けば、…一応、スーツは持っているというので、それに着替えて貰う。
10分程して、部屋から出て来たイツキを見て、林田は思わず変な声を上げる。
小柄で細身の体にぴたりと合う黒いスーツは、品の良い、良い仕立てのもので、シンプルなのにどこか華やかで。
イツキに、とても良く似合っていた。
「…スゴイね。なんか。……はは、…なんか、ホストとかになれそうじゃん?」
久しぶりの「仕事着」。イツキは襟元に手をやりながら、
林田の言葉に、照れたような困ったような笑みを浮かべた。
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