2019年05月26日

余波・7







真夜中に電話が鳴った。黒川からだった。
眠っていたイツキはケータイを耳に当て、これが現実かどうか、慎重に確かめる。



「………本物?」
『は?……なんだ、寝ぼけているのか?』
「………ん。……だって、夜中だよ…」



そうは言ってもまだ深夜1時を回ったところ。一緒にいた頃には、普通に、焼肉屋になど行った時間。
黒川は一仕事終え、事務所でビールを飲みながら、ほんの気まぐれだという風にイツキの様子を伺う。

寂しいだの、会いたいだのは、お互い、口が裂けても言わない。
先に言い出した方が負け、というゲームにでも、興じているのか。



『…どうだ?…上手くやっているのか…』
「まあね。問題ナシ。…マサヤが持って来てくれたスーツも、…役に立ったし」
『黒スーツか?……着る機会があったのかよ』
「ふふ。…ちょっとね。……大丈夫。…俺、がんばってるから……」



黒川もイツキも目を瞑りながら話をする。そうすればまるで隣に、すぐ耳元に、相手がいるような気になってくる。

手を伸ばして、触れられないのが、残念。



「マサヤ」
『……うん?』
「早く、玉子焼き、ね。俺、待ってるからね」
『…ああ』




そうして、通話が終わってからも二人はしばらく同じように、互いの事を、想っていた。






posted by 白黒ぼたん at 23:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
想いあってる2人なのに、口には出さなくて、玉子焼きを理由に会いたい気持ちを伝えるいっちゃんの気持ち、切なーい!
黒川、なんとかせい!
Posted by はるりん at 2019年05月27日 06:55
せっかくいっちゃんから言い出しているのだから

黒川、乗っちゃえばいいのに…と思います。

変なプライドとか、早く捨てなよ。笑
Posted by ぼたん at 2019年05月29日 23:41
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