2019年05月31日

黒川







その日、真夜中を過ぎても、西崎の事務所はまだ人の出入りがありザワついていた。
奥のソファには頭から血を流した佐野が、その個所をタオルで押さえ
脇で西崎と黒川が、電話を片手に、対応に追われているようだった。


「……申し訳ないです、社長。……こんな面倒、おこしちまって……」
「いや、売られた喧嘩だ。仕方ないだろう。……まあ、佐野も、少し手が早かったがな」


黒川は半分笑いながらそう言い、佐野を見下ろす。佐野は面目次第も無いと言った様子で、頭をぺこりと下げる。

西崎組の管理する店で、他の組の若い連中が揉め事を起こしたのだ。
ケツ持ちで居合わせた佐野が仲裁に入ったものの、少々、行き過ぎ…、結局、場を収めるために黒川まで呼び出される羽目になる。
それでも、警察沙汰にはならず、死人も出ず、内々で事は片付いたのだった。



やがて、出掛ける用意が出来たと、一ノ宮が黒川を迎えに来る。



「…一応、向こうさんにも挨拶に行ってくる。まあ、大事にはせんよ。最近は公安もウルサイからな…」
「すみません。ご足労、おかけします…」



西崎と佐野は深々と頭を下げ、黒川は事務所を出て行った。








一ノ宮の運転で、夜の街を走る。
相手方に連絡も付いている。手間は掛かるが、そう大した問題ではない。



「………よろしかったのですか?」
「…うん?」
「……ご予定が、……おありだったのでしょう?」


ハンドルを握りながら、一ノ宮がちらりと後ろの座席に目をやる。


「…まあ、こんな時もあるだろうよ。……構わんさ…」


そう言って黒川はスーツの内ポケットから煙草を出し、一服する。
繁華街の流れるネオンを眺めながら、溜息まじりに煙を吹かした。






後ろの座席には

玉子焼きの入った、寿司屋の折り詰めが置かれていた。







posted by 白黒ぼたん at 21:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
なんてタイミングの悪い…
いっちゃんに会わせてあげたかった〜(ノД`)
黒川もがっかりね
Posted by はるりん at 2019年06月01日 15:06
強がってはいますが

めっちゃくちゃ、ガッカリしてますよ。

黒川!
Posted by ぼたん at 2019年06月02日 21:28
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