2019年06月08日
極楽の夜・4
食事処の隣りは、休憩スペースになっていた。
薄暗いフロア。個別にテレビまで付いたリクライニングソファが、等間隔に並ぶ。
中ジョッキ5杯でかなり酩酊したイツキとミカは、少し休んでから帰ろうと、そこに移動する。
「………カレと、離れちゃってて、寂しい?………会いたい?」
「…………ん。…………会いたい…」
隣り同士ソファに座り、最後に小さな声でそんな話をする。
口に出して改めてイツキは自分がどれだけ黒川に会いたがっているのか、気付いた。
数時間休んだ頃だろうか、ミカが急にイツキの肩を揺すり、起こす。
実家から連絡があり、急に家に帰ることになったと言う。
「……ごめんね、しーちゃんの具合が悪いらしくて…、あ、実家の犬なんだけど、もうおばあちゃんで…。……イツキくん、もう少し休んで行って。朝になったら、送迎バスも出るから……」
まだ酒も残り、寝ぼけていたイツキは判断も付かず、ミカの言う通りにすることにする。
不安もあったが日頃の疲れもあり、目を閉じるとまた、すっと寝入ってしまった。
次に目を開けた時、イツキは何故自分が一人、広いフロアのリクライニングソファに座っているのか解らなかったが……、少し経つと、思い出した。
ケータイを開くと時間は朝の5時。連絡は、ミカからのみ。犬は大事にはならなかったとの事。
「………よかった…」
イツキはつぶやき、安堵の溜息を付き、取りあえず目を覚まそうと、もう一度、風呂に入ることにした。
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