2019年06月11日
極楽の夜・7
「……兄ちゃん、学生か?」
「………いえ」
「…地元か?……ここには初めて来たのか?」
「……あの、……最近越して来たばかりで…、よく解らないです…」
男はイツキに興味を持ったのか、そう尋ねながら少し距離を詰める。
イツキはなるべく顔を見られないように他所を向き、少し距離を取る。
ここいらでは見掛けない顔。もちろん地域の若者全てを知っている訳ではないが、イツキのようなタイプは一度見ればおそらく、記憶に残るに違いない。
優し気なキレイな顔立ち。女性的な白い肌。半分向こうを向いているためか、うなじから肩のラインが目に付き、それがなんとも艶っぽい。
なにより、様子が、オカシイ。
たいていの連中は、男の彫り物を見ると、見てはいけないものを見てしまったと慌てふためき、恐れ、怯え、その場から逃げ出そうとする。
これどこの若者は、どうも反応が違う。
彫り物に怯えている…という感じではない。それから目を逸らしているのではなく、自分の身体を、隠しているといった風なのだ。
何かあるのか、と、男は覗き込むようにイツキを見る。
微かに湯が動き気配を感じるのか、イツキは一層身を固くする。
さっさと風呂から出てしまえば良いものを…、…風呂場の出入り口近くに男がいるため、風呂から出るには男の前を歩かなければいけない。
立ち上がり、男の前ですべてを晒すなど、想像しただけで……
……イツキは簡単に、感じてしまう。
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少しずつ、距離が縮まってきてますよ!
いっちゃん、期待してますね(//∇//)
ちょっとは期待しちゃってるんですよねー。
駄目な子だな…w