2019年07月06日

枕営業







「……一ノ宮さん?ええ?…どうしたんですか?……あ、でも、ごめんなさい、今、俺……飲み会中で…」





一ノ宮からの電話は突然だった。
着信に気付き、トイレにと席を立つ。
居酒屋の店内はBGMが流れ、時折どこかからか笑い声が聞こえる。
イツキはケータイに耳を押し当て、懐かしい声を聞く。


遡る事、数時間前。ハーバルを訪れた林田が、社長に詫びを入れる。
ハーバルへの発注数を間違え、取引先の商社に迷惑を掛けてしまったのだそうだ。
幸い、そのミスはすぐにカバー出来るものだったが…、その代わりに、飲みの席に付き合えと言われてしまったと。

イツキも一緒に。

相手は、先日の接待の相手、中野井部長だった。

今回こそイツキは誘いを断っても良さそうなものだったが、申し訳ないと頭を下げる林田に、つい、ほだされてしまう。




「……仕事先の人に誘われて…接待みたいな感じで…。……ん、一ノ宮さん、マサヤって今、そこにいるんですか? 俺がそんな事してるなんて内緒にして下さいね」



黒川が知れば、どうせ枕営業だ何だ、また余計な事を言われるに決まっている。
確かに…近いものはあるのだけれど。今日は違うもんと、イツキは心に決めている。

トイレからの戻りの遅いイツキを心配して、林田が顔を出す。
この後、もう一軒、別の店に行くのだと言う。
イツキはケータイに軽く手を当て、『…今、行きますー』と返事をする。



「……ん。ごめんなさい、バタバタしてて。一ノ宮さん。電話、嬉しかったです。ありがとうございます。俺、大丈夫。元気にやってます。……また今度、連絡しますね」




そう言って、電話を切るのだった。





posted by 白黒ぼたん at 21:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
いっちゃんと何かしら関係のあった男が2人…どんどん
向こうの上司は、先日の事があったからいっちゃんを呼んだのですよね
今日は違うもん、っていっちゃんかわいいんですけど〜
でもあなたの決意はあって無いようなものですから、さてどうなることやら
Posted by はるりん at 2019年07月07日 09:52
いっちゃん、決意はよくするんですよ。一応。

でも飲むと、あっちゅー間に流されちゃうんですよねぇ…
Posted by ぼたん at 2019年07月08日 22:03
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