2019年07月10日

助け船








客もまばらな小さなスナックとは言え、そこは公衆の面前。
こんな場所で、本気で感じる訳には行かない。
男の手の感触を逃すように、イツキは気を逸らし、唇を噛み、駄目ですよ…という風に男を軽く睨む。

その仕草が、男には堪らないのだろう。

まるで、電車内で痴漢でもしているように。

相手が嫌がる素振りを楽しむ。




「………どうしちゃったかなぁ、イツキくん。ほらほら、グラス、零れちゃうよ?」


反対側の中野井部長も、面白そうに声を掛け、身を強張らせるイツキの顔を覗き込む。
イツキは、どこまで許して良いのか、感じて良いのか、本当は嫌がっても良いのか…その境目が解らず、とりあえず小さく、首を左右に振る。
手に、水割りのグラスを持っている為、男達を押し退けることも出来ない。


「……それとも、違うトコが、……零れちゃうかなぁ?」


中野井はさらにイツキに顔を近づけ、耳たぶに、はあはあと息を掛けながらそう言った。








「……あっ、次、俺の歌です。マイク、こっちです。こっち!
林田、歌います!聞いて下さい!

……チャッチャッチャッチャ、チャララララ〜、フッフー!!」


突然、向かいの席の林田が立ち上がり、陽気な酔っ払いの声でそう叫ぶ。
そして、イツキが手に持っていたグラスを奪い、その水割りを一気に飲み干す。

どうにかイツキを助けたいと、林田なりに考えたのだろう。
スナック店内中の視線を集めるように、元気に歌い始めるのだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
いっちゃん、ピーンチですね
林田さん、何とかしようと奮闘していますが、どうなるのか!
Posted by はるりん at 2019年07月11日 07:16
いっちゃんピンチはいつもの事ですからね〜笑

今回は…、…どうしましょうかー??

Posted by ぼたん at 2019年07月11日 22:12
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