2019年08月12日

二人風呂







辺りを警戒したり、黒川のハダカを意識したり…イツキが一人忙しく気を遣っている間に、黒川はさっさと身体を洗い、露天風呂のある外へ出てしまう。
慌ててイツキも身体を流し、黒川の後を追う。

屋外には、イツキが刺青の男と出会った岩風呂の他にも、いくつかの風呂がある。
小さな滝のような打たせ湯や、季節ごとに替わるという入浴剤入りの風呂。
奥の方にもいくつか小さな湯船があり、黒川はそこへ向かう。
今にも倒れそうな爺が一人、湯に入っていたが、黒川と入れ替わりに出て行き、辺りに人気は無くなる。



「…意外と、静かだな…」


ざぶんと湯に浸かり、黒川が一息つく。
追って来たイツキも、黒川の隣りに入る。他の客がいないのはありがたいが、やはり少し、照れる。
なるべく黒川の方は見ずに、ぐるりと周りを見渡す。

「……みんな、広いトコ、入るのかな。……滝みたいなのも、楽しそう……」



周りを見渡し一周すると、黒川と目が合ってしまう。
機嫌が良いのか黒川はニヤリと笑い、無駄に、イツキを意識させる。



「……マ…、マサヤは……」
「……ん?」
「……刺青、…無いんだね…」
「あった方が良かったか?」



黒川の答えに、イツキは首を横に振る。
…仕事柄、そういった男達に何度も遭って来たが、やはり、それが与える印象は大きく、未だに…怖い。
逆に、黒川の背中に刺青があれば慣れたのかも知れないが…、慣れても、困るだろう。



「……世話になった「親」が、……そういう系じゃなかったからな…。…まあ、入れても良かったんだが…、丁度、その辺りで忙しくなってな……」
「……怪我した…頃?……一ノ宮さんと…、…とか?」
「……ああ」



黒川の若い頃の話は、イツキもあまり詳しくは知らない。
黒川もあえて話すつもりはないのだろう。

話を終わらせるように、手を伸ばし、イツキの顔を自分に向けさせる。




posted by 白黒ぼたん at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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