2019年08月22日
お食事処・4
黒川が席を立った後、イツキは一人、ニヤニヤ笑いながらビールに口を付けていた。
イツキの言葉に乗った形にせよ、確かに黒川は『寂しい』と言ったのだ。
……向こうに居た時より格段に、気持ちが悪い程、黒川は優しく、正直だ。
イツキは何だか腹の下のほうが熱く、もぞもぞとして、どうにも落ち着かなくなる。
「……マサヤ…、……変。……いつもはあんなコト、言わないのに……。
……離れた場所ってゆーのが、……いいのかな。非日常的…、みたいな。
もしかしてマサヤって…、本当は、……俺のことすごい、……好きなんじゃない?……なんてね……」
自分で言って、自分で突っ込み、くすくす笑う。
解っている。それでもまだ、冗談にしておきたい。
この場にいる、今だけなのだ。こんなに、素直でいられるのは。
……だったらこの離れた生活も、案外悪くはない、と思う。
「ずい分と、ご機嫌だな。何か、イイコトでもあったのかな?」
ふいに声を掛けられ、イツキは驚き、顔を上げる。
その男は、横のついたての向こう、リクライニングが並ぶ休憩スペースから姿を現した。
イツキと同じ館内着の甚平姿。それでも、下にTシャツを着こみ、素肌を隠している。
そうでなければ、腕の途中まで、鮮やかな色彩の刺青が見えたはずだった。
「…………あっ…」
イツキは短く声を上げる。
男は、先日イツキがここで出会った、刺青の男だった。
「また会えるなんて、ラッキーだな。ふふ。ご縁ってヤツかな」
男はそう言って笑い、イツキの向かい側に、勝手に腰を下ろす。
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ヤクザ同士ですよね…
黒川さん、いっちゃんの事守って下さいね〜!
どうするのか、楽しみです
さて、どうしますかねー