2019年09月15日
柿の種
黒川はバーを出て、散歩がてら夜の歓楽街を歩く。
飲み直しても良いし、事務所で仕事の続きをしてもいい。ただ、一人の部屋に帰る気はしなかった。
ポケットのケータイが鳴る。
相手が一ノ宮なら、すぐに出ようと思ったが、生憎、違った。
黒川はディスプレイに浮かぶ「イツキ」の文字だけ、確認して
そのケータイを、ポケットに戻した。
一人、バーに残っていた吉村は、ポリポリと乾き物のツマミを食べていた。
ケータイが着信を告げる。
周りに他の客もいないため、吉村はそれに出て、不機嫌そうに相槌を打つ。
「………ああ。………いや。
……どうだろうな…。近くにいない事は確かだが、どこにいるのかまでは解らんよ。
……ともあれ、こんな連絡もこれっきりだぜ?……俺は黒川と喧嘩する気は無いんでな。
……笠原さん。あんたも、これ以上、いらん波風は立てるなよな………」
そう話して、通話を切って、ふうと溜息をつく。
気の乗らない取引。リークする程の情報では無いが、それでも後味は悪い。
「……まあ、何が起きても…、自業自得ってヤツか…」
最後にそう呟いて、吉村は残りのピーナッツを口に放り、バーを出て行くのだった。
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吉村、言わなくて、偉い!
吉村としては黒川を敵に回したくはないのでしょう。
ま、黒川も重要な事は話してませんしね〜