2019年09月20日
フライング
その店に、その男は突然現れ、店内はザワつく。
男は知った事かとカウンター席に座り、酒を注文する。
連絡を受け、店のオーナーが奥から出て来る。
男の隣りの席に座り、自分にも、男と同じ酒を用意させる。
「……黒川さん。……フライング過ぎやしませんかね?」
「………ただの客だ。……気にするなよ」
「はは。そうはいかんでしょう…」
男は、黒川。オーナーは笠原。
「フェリーチェ」は笠原のホームで賭博などをやらせる場所だが、表向きは、上品なバーを装っている。
「…ちゃんとした話し合いの場を設けたいと…、そちらの一ノ宮さんと連絡を取っている最中ですよ?」
「それとは別だ。ただの客だと言っただろう」
黒川は笠原を見もせず、グラスを傾けながら静かにそう言う。
……そう言う事ならと、笠原も腹をくくる。遅かれ早かれ、この男とは話をしなければいけないのだ。
「……本当は、イツキくんも同席して欲しいトコロですけどね」
「…どいつもこいつも…、あれに固執し過ぎだ。いい加減、放っておけよ」
『固執しているのはアンタだろう』と、笠原は言いかけて言葉を飲み込む。
代りに、はは、と小さく笑う。
喧嘩をするには、まだ、早い時間。
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