2019年10月04日
完全装備
遡って日曜日。イツキはミカと買い物に出かけていた。
電車で少し行った先、ここいらでは一番の華やかさ。以前、林田と接待で訪れた駅前。
「ああ、もう、服、決まんない。イツキくん決めた?長袖?半袖?」
一週間後に迫ったイベントの為に、あれこれ準備が必要なのだという。
「スカートはさー、この前買ったミモレ丈のにしようと思ったんだけど…動きにくいかなぁ…」
「動きにくいと思いますよ。上も、お揃いの半纏着るって言ってたから…何でも…。…Tシャツで良いんじゃないですか?」
「イツキくん!銀座よ銀座、ザギンよ!?何があるか解らないのよ?完全装備で行かなきゃダメでしょ!」
男のイツキにはよく解らないのだけど、女子にとっては、都会と言われる場所に赴く時の準備は大変なものらしい。
午前中の内に数軒店を回り、すでに両手いっぱいの紙袋を持ち、少し休憩と、食事が出来る店に入る。
イツキは冷たいお蕎麦のついた天丼。ミカは、カツ重。
「……あたしね、土曜日、向こうでホテル取ろうかなって思ってるの。イツキくん、一緒に泊まる?……あっ、もちろん、違う部屋よ?」
「……でも、土日とも社長の奥さんが車、出してくれるって言ってましたよ?」
「朝、5時出発よ?2日間も!だったら、泊まっちゃった方が…夜も遊べるじゃない」
元気よくカツ重をかきこみながら、ミカはそう言う。……確かに、イツキもそれは考えた。
けれど
近くに、…と言う程近くもないけれど…、それでも近くに、自分が生活していた部屋があるのに……、黒川は、帰って来るなと言う。
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