2019年10月11日
誘惑・4
「……俺んとこの会社で関係してるのがハーバルさんと…もう2つと…、あとレストラン部門もあって…、……オーガニックワインと地元食材のコラボメニューが……」
「レストラン!同じフェスタの会場で、あるんだ?」
「ああ。コラボメニューの試食がてら、行くよ?…一緒に行く?土曜日?」
口に頬張った餃子をビールで流して、林田はカバンの中から、そのレストランのリーフレットを取り出す。
お洒落な、イタリアン。フェスタ期間中はワインの飲み放題もあるらしく、思わず、目が釘付けになる。
「……でも、俺、土曜日は…、……一旦、こっち、戻って来るから……」
「そうなんだ? ミカちゃんなんかは、向こうで泊まるって言ってたけど」
「……うん。……俺は…、……土曜も日曜も…ぴゅー帰り……」
明らかに本意ではないらしく、イツキは不機嫌顔でビールを啜る。
「……そっか。まあ、帰れない距離じゃないしね。…都内のホテル代は馬鹿にならないもんね」
「………ん…」
「……それとも、……一緒に泊まる?……俺、ビジネスホテル、取るけど…」
「…ううん。……別に、泊まるトコが無い訳じゃないから……」
少し寂し気に視線を逸らせるイツキに、何か、のっぴきならない事情がある事は感じられたが、あえて、尋ねない。
おそらく、あのヤバイ恋人を含め、何か、問題があるのだろう。
イツキが言い出さない以上、林田はオトナの対応で、静観するだけとする。
イツキも、愚痴を零したいところだが、ここは我慢する。
我慢する代わりに、吹っ切る様にニコリと笑って、残りのビールを一気に飲み干した。
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