2019年10月17日
余計な揉め事
「……えーと、こちらがハーバルさんです。取扱いは主に美容関係…化粧品、オイル…石鹸など…。……そうですね、地元の農家さんと協力して天然素材を使ってまして…。
ネット販売…、道の駅にも卸してます。都内の美容室のノベルティなんかも企画から……」
目が回る程忙しい最中に、林田が、今回のイベントの関係者だと言う男を連れ、作業所にやってきた。
フェスタに参加する地元企業を束ねる、元締め、もしくはトラブルが起こった際のケツ持ち…と言った様子。
男は、事務所の中をぐるりと見渡し、細々とした作業をこなす従業員に、温かい笑みを浮かべる。
奥の部屋から社長も顔を出し、男に挨拶をする。
林田はこの後もまだ数軒回る予定があるようで、『……また後でね』と、イツキとミカに小さく手を振る。
イツキはずっと下を向き、仕事が忙しいフリをする。
もっとも、顔を上げ、ニコリと微笑まなくてもおそらく、気付かれていたと思う。
林田が連れて来た男は、イツキが風呂場で出会った刺青の男、松田、だった。
「……ね、ね、今の人、ちょっと良くなかった?」
林田と松田が事務所を出て行くと、すぐにミカが話しかけて来た。
「………いや、俺、見てなかったし……」
「ええー?……ちょっとこっち見てたよー?…どこの人だろうね?…保険屋さんかな?」
興味津々の様子。
どこかの俳優に似た、しゅっとした面立ち、切れ長の目。
スーツを着込んでしまえば、その下に、極彩色の刺青があるとは誰も思わないだろう。
また、余計な揉め事が起こる気配がした。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186693490
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186693490
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
これはまずいですよ〜 黒川さん!
もう、嵐の予感。笑