2019年10月19日
人さらい
フェスタの準備が忙しく、イツキが仕事を終えたのはいつもより遅い時間。
日が暮れた夜道を、アパートに向かって足早に歩く。なんとなく、悪い予感がするのは、大抵、当たる。
イツキの脇を一台のタクシーが通り過ぎ、少し先で停車する。
ハザードがたかれたままの車から出て来たのは、松田だった。
「………よう」
親し気な笑みを浮かべる松田。
イツキは、一応、ぺこりと頭を下げると…少し、立ち止まり、それから意を決した様に足早に、松田の横をすり抜けようとする。
が、簡単に腕を掴まれてしまう。
「なになに、何、帰ろうとしてんのよ?」
「…………」
「ビックリしたなぁ…、まさか、こんな所で働いてるなんてね…」
「……離してください、俺、……帰んなきゃ…」
イツキは腕を振り、身体を反らし、さらに反対側の手で、自分の二の腕に食い込む松田の手を外そうとするのだが
それは全くと言って良いほど、ピクリともしない。
本気を出した男の力がどれほど強く、自分の自由を奪うか、イツキは身に染みて知っている。
「…ちょっと付き合えよ、いいだろう?……オシゴトの話も、あるかも知れないぜ?」
「無いです」
「…まあまあ。…とにかく、車、乗れや。……ずっと待たせちゃ、悪いだろう?」
「………やッ…」
有無を言わさず松田はイツキの手を引き、停められていたタクシーまで歩かせる。
イツキは引きずられながら松田の腕をグーで叩き、しゃがみ込んで抵抗しようとして…バランスを崩し、その隙にさらに身体を引かれてしまう。
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人さらいですよー!
助けてー!
逆に…ねー?