2019年10月21日

裏目






どんなに抵抗しても、男の力に勝てそうもない。
引き摺られ、タクシーに押し込まれる……その寸でのところで


「……イツキくん?……どうしたの?……その人は……?」


背後から声を掛けられ、思わず、松田の足が止まる。
振り返るとそこには、小森の姿があった。



イツキより遅れてハーバルを出た小森は、途中、何か言い争う人影を見付る。
見ればイツキと…見慣れぬ男。前方にはタクシー。まるで無理やり車に押し込まれ、連れ去られそうな…マンガのような場面。


「………イツキくん?……その人、さっきの…林田さんが連れて来た人?……何?……どう…しちゃった…の………?」
「…………小森さん……!」


イツキは、小森に駆け寄ろうとするが、松田はイツキの二の腕を掴んだまま離さない。
行こうとした反動で、小さく、松田の方に身体がよろけ、つい松田を見上げる。

松田は、突然入った邪魔に、酷く不快そうな表情を浮かべ……ギロリと小森を睨む。
気配が変わる。まるで青い火花が上がるよう。ゾクリと背筋に冷たいものが走る。


「……あ、あ…あなた、イツキくん、離しなさいよ、……嫌がってるじゃないの」
「………なんだ、このババァ…、ウルセエな……」



舌打ちとともに小さく呟く。凄味のある低い声。
男の怖さに、小森はまだ気づいていない。




小森は一歩前に出て、イツキと松田に手を伸ばし、二人を引き剥がそうとする。
けれどイツキは、逆に、背中で松田の身体を押し、小森との距離を取る。

松田が手出しを出来ない、安全な距離。




「…ごめんなさい、小森さん。何でもないんです。あの…、松田さんが…車で送ってくれるって言うの、俺、遠慮して断ってて…、あの、でも、やっぱり…

送ってもらおうかな、ね、松田さん。……行きましょ?」






posted by 白黒ぼたん at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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