2019年11月04日
得意技
「………もう、準備も完璧だからね、今日はお昼でお終い。
明日は5時出発だからね、ああ、アパートの前まで迎えに行くから…
…ミカちゃん、今日は遊びに行っちゃ駄目だからね! じゃ、お疲れ様」
そう社長に言われて、みな、作業を終える。
「オーガニックフェスタ」を明日に控え、すべきことは全て終えた。
荷物などはすでに発送済みで、後は明朝、無事に起きられるかどうか…だった。
「……イツキくん」
イツキが帰り支度をしていると小森が傍に寄って来て、小さな声で話しかける。
「……昨日、……あれから、大丈夫だった?」
「………え、……あ、……はい」
「…何か様子が変だったから…、……気になって……」
小森の心配は本心からのようだ。イツキの笑顔も、また本当のものだ。
「大丈夫です。……松田さん、ちょっと強引だったので…アレだったんですけど…、別に、何も…。……ちゃんとおウチに帰りましたよ」
「…そうなの?…良かった」
そう言って、小森はほっと胸を撫でおろし、部屋を出て行った。
勿論。
別に何も無かった、訳では無いが…。
まあ、…仕方の無かった事だし、…済んでしまった事だし…と
イツキの中では、踏ん切りが付いていた。
こういった事案を頭の中で整理し、納得させるのは、イツキの得意技。
……そうでもしないと、あの日々を、生きて行けはしなかった……。
セックスなど、穴を貸すだけ。
洗って戻せば、問題ない。
そう黒川が言うのを真に受けている訳ではないが
時には方便。役に立つ。
「なになになに?…イツキくん、昨日、なんかあったの?」
話を小耳に挟んだミカが、興味深々、イツキに詰め寄る。
イツキはまたニコリと笑って、「……なんにも、無いよ!」と答えるのだった。
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そうやって自分の中で思い込まなければ、とっくにおかしくなっていましたよね
悲しい事に、いつの間にか、身に付けた術なんですよね