2019年11月14日

フェスタ・6







部屋は真っ暗で誰もいなかった。
安堵か、落胆か、イツキはふうと息を一つつく。




充電ケーブルの調達先は…、……新宿の、マンションだった。
こちらには近寄るなとキツク言われてはいたが…、まあ数分の事。すぐに立ち去るつもりで、タクシーも下に待たせている。

黒川に知られれば怒られるだろうが、土曜日のこの時間は仕事で部屋にいない事が多い。
その読み通り、やはり黒川は不在。





「…………ん。………まあ、いないと思ったから…、……来たんだしね……」





寝室も、リビングも、そう散らかってはいない。むしろ、生活している雰囲気がない。
それが嬉しいのか哀しいのか解らない。

自分がココに居なくても、何も、変わらないのだろうか。

数か月ぶりの自分の部屋に、感傷に浸る間もなく、イツキは棚の引き出しの奥から予備のケーブルを探し出す。
ついでに、着替えを何枚かまとめ、そこらにあったコンビニの袋に突っ込む。

何気に冷蔵庫を覗くと、日付の過ぎた牛乳が入っていたので
これみよがしに流しに流し、中を洗って、水切りに立てかけた。





滞在時間は5分も無かっただろうか。
イツキは部屋を出て、急ぎ、エレベーターに乗る。
一階に着き、扉が開き、目の前に黒川の姿が見えた時は



本気で、心臓が止まるかと思った。






posted by 白黒ぼたん at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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