2019年11月16日

フェスタ・7







「………ひっ」




目の前の黒川に驚いたイツキは、声にならない悲鳴を上げる。
もっとも、驚いたのは黒川も同じで、ぎょっとした顔でイツキを見る。


「………お前、……何で……」
「ちょっと寄っただけ。ケータイの充電器が無くて…。本当に、ちょっとだけだから、すぐ行くから!」


咄嗟に、黒川に怒られると思ったのだろう。
イツキはとにかく委縮し、言い訳を口にして、エレベーターの籠から出る。
何でもないから、という風に手を前でひらひらさせ、黒川から距離を取る様に壁際を這い、マンションを出ようとする。



「…大丈夫。何も問題、起こしてないし。ちゃんと、やってるから……」
「…イツキ」
「…ぴゅーって行くから、じゃあね、マサヤ」


「イツキ」



イツキは、黒川に背を向けエントランスの扉をくぐる。

その直前に、黒川がイツキの腕を掴む。

ぐいと引き、そのまま背中ごしに抱き締める。




怒っている、のか、表情は見えない。
それでも



「バカか、お前は」



その口調は言葉ほど、厳しくは無かった。





posted by 白黒ぼたん at 23:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ぴゅー
って行っちゃう前に捕まえられて良かったね
Posted by ちろ at 2019年11月20日 20:22
本当は、捕まえられたかったんですよ♪
Posted by ぼたん at 2019年11月20日 22:34
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