2019年11月21日
フェスタ・10
フェスタ二日目。
イツキはきちんと時間通り会場に入り、社長夫妻と準備を進める。
家に幼い子供がいる小森は、今日は不在。
人数が減り、忙しいことは解っているのに…、ミカは、30分の遅刻。
『寝坊しちゃった』と舌をぺろりと出し、急いで支度に取り掛かる。
実は、ミカは、昨晩、林田と過ごしていた。
以前から好意を寄せていた相手に、酒の力と旅先の高揚感が手伝ったとは言え、ようやく思いを伝えたらしい。
少し、手が空くと、何かを思い出し…幸せそうに微笑み、…そうかと思うと…憂いを帯びた溜息を、肩から、つく。
そして、それは、イツキも同じで、気付くと二人とも同じような顔で、仕事の手を止めぼんやりとしていた。
「どうしたの?ミカちゃん、イツキくん! もう疲れちゃった? はいはい!頑張って!」
社長夫人はそう鼓舞して、二人の前に商品の入った段ボールを置くのだった。
そうやって
皆、それぞれ、自分の仕事をこなし
フェスタは盛況の内に閉幕となる。
最後の商品を手渡した時など
イツキはうっかり、泣きそうになってしまった。
自分に、こんな仕事が出来るとは、今まで自分も含め誰も知らなかった。
きちんと働き、人の役に立てる。「ありがとう」と言われる。
それがこんなにも嬉しい事だと、イツキは、初めて知ったのだった。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186830606
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186830606
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
それを思うと可哀想な子だなぁ
勉強しているみたいです。
普通の子に、なれるのかな?