2019年12月05日
フェスタ・20
強引にこじ開けた唇に笠原は侵入し、辺りを舐めたり吸ったり、噛んだり。
それでも意外とあっさり後退し、唇を離す。
嫌がる、イツキの様子を、楽しんでいるようだった。
イツキは濡れた唇を手の甲で拭い、また窓の方に寄って、笠原を睨む。
「…そのカラダで、ずい分、荒稼ぎしたんでしょ?…光州の高見沢さんが悔しがっていたよ?惜しいコト、したって…」
「……全部、終わってます。もう、俺、関係ないハズです…」
「そんなイイ金ズルに、仕事…させなくなったのは…、……キミの事、好きになったからかな…、黒川が」
多少、アルコールの残るイツキの頭。
のらり、くらりと続く会話。
笠原はたまに手を伸ばし、イツキの身体を軽く触る。
何に気を付ければ良いのか、解らなくなる。気が散る。
「……好き、とか……、そんなんじゃ…、ない……です…」
「そう?それにしちゃぁ、ご執心じゃない。……未成年の売り子にさ…」
「………俺、マサヤにお金、借りていたので…。それの返済が済んだってことじゃ…ないですか……」
「それなら尚更、イツキくんはもう、自由って事だよね?」
車は一向に目的地に着かず、こんな時間がどれだけ続いたのか解らない。
もしかすると最初からこの時間を作りたかっただけで、目的地など無いのかも知れない。
イツキが答えに困ると、笠原はニヤニヤと笑う。
「イツキくんは、なんで、黒川の傍にいるの?……あんなに、酷い事、されたのにさ」
笠原のケータイが鳴る。
笠原はスーツの内ポケットからケータイを出すと、ディスプレイに浮かぶ名前を見て、顔を顰める。
電話の相手は、黒川だった。
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