2020年01月09日
祭小話・3
イツキからのメールに素っ気ない返事をした黒川は、イツキの事をまったく心配していない。
訳ではないのだが、それは周りにも本人にも、どう判断して良いのか解らないほど希薄で。
それでも、時折ケータイを開いては、…ふん、と鼻息を鳴らす様子を見ると
まあ、気にはなっているのだろうと、思う。
事務所で黒川と一ノ宮が面倒な書類を片付けている間、イツキはオーガニックワインに口をつけながら、充電の切れたケータイを眺め、途方に暮れていた。
「………あの、馬鹿。……連絡も寄越さないで…。……どこかで遊び呆けているんじゃないだろうな……」
仕事が一段落した所で、黒川と一ノ宮は缶ビールを開ける。
黒川は小さく愚痴を零すと、一ノ宮は笑う。
「忙しく働いて、疲れているのでしょう。…真面目に頑張っていますよ、イツキくん」
まるで今、見て来たかのような口調に、黒川は怪訝な顔で一ノ宮を見るのだった。
ミカは、林田に好意を持っていた。
歳はミカの方が少し上。
林田は2,3年前からハーバルに出入りするようになった商社の担当者。
ミカはぱっと見が派手で遊びにも慣れている様子だが…、実際は、恋愛に奥手なところもあって…
なかなか、あと一歩、先に進む事が出来ないようだった。
オーガニックワインのレストランを出て、イツキは一人タクシーで、社長夫妻の待つ旅館へ向かう。
ミカと林田は宿泊先が別だったが、方向が一緒だったので、とりあえず同じタクシーに乗る。
「………もう一軒、行きません?……ちょっとだけ…」
そう誘ったのはミカの方からだった。
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