2020年01月18日
祭小話・終
「イツキくん、イツキくん、やだぁ、もう、心配したんだから!」
オーガニックフェスタも終わり、地元に戻り、
明けて翌日、ハーバルの作業場で皆で顔を合わせる。
姿を消したその日の内に、イツキの無事は松田から連絡を受けて解っていたが
やはり実際に顔を見ないと安心出来なかったようで、ミカは思わず、イツキに抱き付く。
「………ごめんなさい、ミカさん。…みなさん…」
「まあ、大丈夫って聞いていたからね。でも、駄目だよ、急にいなくなっちゃうなんて」
「ごめんなさい。……バッタリ…、知り合いに出くわして…、……つい」
老社長に窘められ、イツキは申し訳なさそうに項垂れる。
実際、イツキの身に起きたことはもっと危機感のある大事件だったのだが、それはここでは関係のない話。
横にいた小森が、やれやれといった風に肩をすぼめ、口を挟む。
「…ま、仕方ないわねぇ。向こうに友達もいるでしょうし、…若いしね。
…ところでミカちゃん、いつまでイツキくんにくっついてる気よ…、って…、あなた、泣いてるの?」
「……だってぇ…」
ミカはイツキに抱き付いたまま、ぽろぽろと安堵の涙を流していた。
これでいてミカは、心底、イツキの心配をしていたのだ。
「ごめん、ごめん」とイツキは謝り、ミカは涙目を擦り、照れ笑いを浮かべる。
端でその様子を見ていた林田は、……もしかして初めてかも知れない……ミカを可愛いと思った。
「ハイ。フェスタも無事終わって、追加の注文もバンバン入っています。皆、ここからまた忙しくなるからね、よろしくね!」
社長夫人に激を飛ばされ、みな、「はーい」と返事をして、それぞれの仕事に取り掛かるのだった。
祭おわり
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