2020年01月20日
イツキと松田・1
フェスタから数日後。
イツキはちょっとした料理屋で松田と待ち合わせていた。
予約された座敷に入ると、すでに、松田の姿があって、イツキは深々と頭を下げる。
「……本当に、すみません。……面倒ばっかり……」
「いやいや、大したコトじゃないし。いいから座って、座って」
松田は笑って、イツキに向かいの席を勧め、イツキはもう一度頭を下げて、着席する。
すぐに料理と酒が運ばれて、テーブルの上は賑やかになる。鍋はてっちりだろうか、卓上コンロに火が付けられる。
「ビール?日本酒?……最初はとりあえずビールか」
松田は瓶ビールを持ってイツキのグラスに注ぐ。そして返しが待ちきれないといった風に、自分のグラスには自分で注ぎ、乾杯、とグラスを掲げる。
一杯目を一気に飲み干し、愉快そうに笑い声を上げた。
また、イツキにトラブルが起きていた。
元はと言えば、イツキが蒔いた種なのだけど。
以前、林田と一緒に、接待の席で、調子に乗って相手先に良い顔をし過ぎて
『次は泊まりで温泉にでも』などと、口約束をしてしまった。
フェスタが終わってからと適当に流していたのだけど、相手はキッチリ覚えていたらしく、本当に連絡が来てしまったのだ。
当然、そんなものに行くはずもなく…、かと言って林田から正面切って断りを入れるのも難しくて…、……松田に相談してみたのだった。
「大丈夫、すぐ、手、引っ込めたよ。……俺のオンナだって、知ってるのか?って言ったら、すぐね。……ハハ、冗談、冗談」
一体、どこまでが冗談なのだろうとイツキは思いながら、スミマセンと、もう一度小さく頭を下げた。
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いっちゃん意外に気が合うでしょ
あたしが好きなのかもです・笑