2020年03月04日
一週間・16
黒川の言葉の後は、少し、沈黙が流れる。
『お前が決めればいい』とは、また、身勝手に、放り出す言葉だな…とイツキは思う。
そうやっていつも重要な決断は他人に預け、そのくせ、それが意にそぐわないと機嫌が悪くなるのだ。
それでも
本当は、『手を伸ばせばすぐ抱ける場所』にいるのが良いと……言う。
「………マサヤ。俺、………傍に、………いてあげようか?」
そんな尋ね方をしたのは、賭けの一つだった。
返事は、「勝手にしろよ」か「偉そうに言うな」か、……もしくは素直に、「ああ」なのか。
『………ああ、そうだな』
「……えっ」
まさかの返事に、逆にイツキは驚く。素っ頓狂な声は、辛うじて、黒川には聞こえなかった。
『………そっちの仕事が片付くんなら、戻って来いよ。……お前がいると面倒も多いが…、………ふふ、飽きないからな』
「…………あ。………うん。………じゃあ、……そうする……」
そう言って、電話を終えてから暫く
イツキは今の言葉を反芻しながら、……黒川は何か悪いものでも食べたのではないだろうかと…、……素直な言葉を疑うのだった。
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いっちゃん、意外な返事にビックリしてますけども…
裏があるんじゃないかと、勘繰りますよ。笑