2020年03月06日
一週間・最終話
日曜日は、昼過ぎまで寝てしまった。
昨夜の黒川の言葉が頭にずっと響いて、うとうとしかけた頃に隣の部屋からまた、あの低いドン、ドンという音がして、満足に眠る事が出来ず
気付いた時にはカーテンの隙間から陽光が差し、イツキの顔を照らしていた。
「………暑ぅ……」
思わず、呟く。
もうじき7月。季節はすっかり夏なのだ。
ここに来た時は4月の半ばで、新宿より少し寒い土地柄に、毛布を被って夜を過ごしたものだったが…
今ではその毛布も、すっかり足元に追いやられている。
倉庫代わりだったこの部屋にはエアコンも無い。
これ以上、この部屋にいるなら、真夏をどうやって過ごそうか…と
ふと、考えて、すぐにそれを止めた。
もう、そんな心配をする必要は無かったのだ。
戻る、事が、これほど嬉しくて安心出来ることなのだと
それを決めて初めて、思い出した。
しかも、それが、黒川の求められて、と言うのがミソで
その意思を、言葉にして言われたのは、青天の霹靂といったところ。
「………違う、別に、そんな意味はなくて、ただ言ってみただけ。
買い物とか、食器洗うのが、面倒だとか、そんな理由かも。
……別に、……傍に居て欲しいとか、そんなんじゃなくて……、いや
そんなの、マサヤに思われたら、……そんなの大変じゃん…!」
イツキはどうにも落ち着かず、布団に包まったまま右に左にと転がり
あれやこれやと言葉を並べては、零れだす笑みを、誤魔化そうとしていた。
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