2020年03月28日

イツキのおでかけ・2







「…こっちのトラブルは落ち着いたの?戻って来られて良かったよね。ハーバル辞めちゃうのは、ちょっと勿体ないなぁって思ったけど…」
「…そうなんですよね…、俺、ハーバル、好きでした。仕事はまだ…続けたかったんですけど……」


折角なので、髪をカットしてもらう。
鏡の前の椅子に座り、優しくブラッシングされ、ミツオの手が触れる。
ハサミを入れる音、時折耳たぶに触れる手、シャンプーの指先の力加減、目を閉じ、耳だけで感じるミツオの気配。


「イツキちゃん、美容関係の仕事、向いてるのかもね。フェスタも、楽しかったでしょ?」
「……はい…」
「何か続ければいいよ。……ウチは、…今、空き、無くなっちゃったけど…、何か…」
「……俺もちょっと、考えてます。……何か、したいなって……」


伸びすぎた毛先を整えてもらい、一番良いトリートメントを入れて貰う。
触ると手櫛がすとんと落ち、自分でも気持ちが良い。
美意識が高いと、意識している訳ではないが……、……他人に身体を触られる機会が多いせいもあって……、……きちんとしていなければいけないと思う。
……自覚はなくとも、……常にどこかで、……自分は「商品」なのだと、思っているのだ。



「……どう?……後ろ、もう少し短い方が良ければ……」
「ううん。丁度良いです。良い感じ…。ありがとうございます」
「…イツキちゃん、もっと話し、したいんだけど…、……今日、仕事上がりに……」



イツキは仕上がった毛先を摘み、引っ張り、ニコリと笑う。
そして、今日はこの後、予定があること。今度改めて、ミツオとの時間を取ることを約束して、美容院を後にするのだった。





posted by 白黒ぼたん at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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