2020年04月07日

線引き








都内、某ホテル。
黒いスーツを着込んだイツキは少し首を傾げ…、ふうと溜息を付いて、正面の黒川に視線だけを寄越す。



「……俺、……もう『仕事』は無いと思った……」
「………俺もだ」


黒川もふうと息を付く。納得がいかない様子なのは黒川も同じのようだ。
手をイツキの首元にやり、久しぶりに結んだネクタイを直す。



「……まあ、お前が蒔いた種だろう」
「………まあね」
「……断っても…、良かったんだぞ?」
「んー。でも、……たまには、いいよ。……マサヤも付き合いとか、あるんでしょ」


そう言ってイツキは小さく笑う。……さして、拒絶していない感じを…、意外に思う。


数日前に二人で夜の街を歩いていた時に、昔の馴染み客にバッタリ出会う。
男は挨拶とビジネスの話を少しした後、…最近はめっきり「イツキ」を出さなくなったとぼやく。
付き合い上、重要な人物。無碍に断れない相手。
それが解っているイツキは変な気を遣い……、結局、『仕事』を許してしまう。




イツキは
身体を重ねる行為を、どう区別しているのか。色恋や何らかの情が絡むと駄目なものが、『仕事』と言われると…大丈夫になってしまう。




「…帰りはタクシーで帰るから、マサヤ、待ってなくていいからね。じゃあね、行って来ます」
「………ああ」



まるでコンビニにでも行くような気軽さで、イツキはひらひら手を振って、奥へと消えて行った。





posted by 白黒ぼたん at 18:03| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
黒川!
まだいっちゃんにその仕事をさせるんですか?
サイテー男!
Posted by はるりん at 2020年04月07日 18:19
最近の甘さに若干幸せすぎて怖くなったのか…
プチ不幸を敢えてやることで 幸せ補正をしているのか……優しくされすぎると怖くなるってどっかで聴いたな
Posted by ふふ at 2020年04月08日 05:24
黒川、、残念。
いっちゃんもダメじゃん😓
、、でもちょっぴりお互いを思う気持ちが
見えてきたかも。複雑、、
Posted by ひとみん at 2020年04月08日 05:49
はるりんさま
はい。黒川サイテーです。でも、それを許してしまういっちゃん…

ふふさま
そうですね。甘いのの後に辛いの食べて、バランス取ってる感じですね。
馬鹿な二人です。

ひとみんさま
お互いを思いながらも、シンプルにそれだけでは過ごして行けないんですかねー。
不器用さんですな。
Posted by ぼたん at 2020年04月08日 22:31
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