2020年04月09日
戸惑い
「………ぜんぜん平気って訳じゃないけど。………まあ、別に。……特別嫌な相手でも無かったし。………大丈夫」
「………そうですか?」
ある日の夕方、事務所で黒川を待つイツキは、一ノ宮と二人きりになる。
数日前に、久しぶりに客を取らせたという話を聞いていた一ノ宮は、得心が行かないようで、それとなく様子をイツキに尋ねる。
まさか今更、行為を強要した訳でもないだろう。
しかも相手は、大金が絡む程の重要人物、でも無いのだ。
笠原や光州会からの誘いは、はぐらかし、断っていたくせに
何が良くて、何が悪いのか、線引きが解らない。
イツキも黒川も、性行為自体には、大して意味がないことは知っているが。
「……最近の社長は…イツキくんを気にかけていましたから。……少し、意外でしたね」
「んー。……でも、そーゆー時はあるでしょ?……しなきゃ、いけない時は」
「まあ、付き合いと言うか…、……そうですね。イツキくんはウチの一番の…め…、」
「目玉商品」と言いかけて、それはあまり言葉がよろしくないと、一ノ宮は口を噤む。
もっともイツキは聞こえていなかったのか、どこか他所の方を向いて、少し考えこむ。
「………だから、……たまには、いいんだ。別に、ヤるくらい。
なんか、それくらいの方が…、落ち着く。……急にマサヤに優しくされても…、…怖い。
ふわふわし過ぎて…、変な気になる。一緒にいる理由が、解んない。
『仕事』で役に立つから、傍にいる、ぐらいに思ってるほうがいいんだ」
「…そうですか…」
確実に変わって来ている二人の関係に、まだ慣れず、戸惑いを見せているのは
おそらく、イツキだけでは無いのだろう。
この記事へのコメント
そだよね、、優しくされ過ぎたり幸せ過ぎるとその気分に委ねたその後落っこちちゃいそうで怖いもん ままならないねぇ自分でブレーキかけるの分かるわぁ(;A;)
Posted by ふふ at 2020年04月10日 03:25
幸せに全部乗っかる程、まだ黒川は、信用できませんからねー笑
Posted by ぼたん at 2020年04月10日 22:31
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