2020年05月02日
セレクトショップ・SATO
東京駅、エキナカのブティック。
女性ものが多いなか、この一角は紳士服を扱っている。
ちょっとした衣料品から、奥には、ブランドの一点ものなども取り扱う店で、客層は外国人観光客から一般までまちまち。
オーナー兼店長の佐藤良夫は、まあ、あらかたの事情には、慣れているつもりだった。
『……イツキくん、これは?……いいんじゃない?』
『………んー……、サイズ、どうかなぁ……』
数日前に来店したカップル客は印象に残っていた。20代そこそこの男女。最初は冷やかしかと遠巻きに眺めていたが、会話の端々から何となく…事情を察する。
『…あたしたち、下の化粧品フロアに入るんです。もー、何、着ようか……困ってるんですー……』
そう言って、女性客は顔を顰めて笑う。連れの男性は、着ていたジャケットを脱いで、店頭の服を数点持って、試着室に入った。
……仕事柄、…脱いだ服を、……こっそりチラリと、見る。
仕立ての良さは、すぐに解る。……ぱっと見、ブランドが解らないという事は、…仕立てから、オーダーメイドなのだと、……気付く。
ああ、確かに。
黒いスーツはとても良く似合っていた。何か特別な仕事に着いているのかとは、思った。
立ち居振る舞いから雰囲気まで、……とにかく……何かが、気になった。
『……すみません、これ、足……、短くしてもらえますかー?』
『…ああ、ええと……一時間ほどいただければ……』
そんなやりとりをした男性客が
数日後、社員食堂の端の席で、コーヒーを飲んでいた。
ああ…、本来ならもう少し……肩幅を詰めるべきだったと
ショップ店長の佐藤良夫は、イツキを眺めながら…、思っていた。
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無自覚って怖いわ〜
キケンキケン・笑