2020年05月10日

意外な相手







スーツを着込んだ男達は、明らかに、一般の客では無い集団。
先頭に立つ案内役らしい男は手に資料を持ち、あれこれ指さし説明しながらフロアを回って行く。
向かいの化粧品店のスタッフは知っているのか、集団に気付き、深くお辞儀をする。
どうやらこの施設の上の人間か、その周辺。エライ役回りの人なのだろうと思われる。



その中に、イツキの知った顔があった。



小野寺、だった。






イツキは…気付かないふりをしようとしたが、その前に、お互い目が合ってしまった。



そして、お互い、何でもないふうに、普通の挨拶のように頭を下げる。
それはおそらく…、どちらも、存在が解った上で…、……ここで声を荒げる事は得策ではないと察したからだろう。





「………なんだろうね?…社長さんの見回り、とかかな。……ね、イツキくん…」
「…………そうかもね…」
「……ん。イツキくん、……大丈夫?……なんか、顔色、悪い?」
「……んー。………ごめんなさい、ちょっとトイレ休憩に行ってもいいですか?」







さすがに平常心ではいられず、イツキはブースを出る。
小走りでフロアを離れ、スタッフ用のトイレに向かう。

……人前に出る仕事をするのならば、……いつかは、知っている人に会ってしまうかもとは……思わなくも無かったが……
その一番最初が小野寺だとは。

確かに小野寺は、新しく都内の百貨店を手掛けるなどとは……言っていたようないないような………。




「…………いや。でも、まあ………。………まあ、………すぐにどうこうじゃ、…ないだろうし………
……したって、俺、別に……、もう、関係ない………よね?」


とりあえず落ち着け、と……イツキはトイレの洗面所で顔をバシャバシャと洗った。




posted by 白黒ぼたん at 21:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
一難去ってまた一難…
小野寺、嫌だな〜
いっちゃんに手を出さないでくださいね
もうロックオンされてますよね
Posted by はるりん at 2020年05月11日 07:02
すぐには動き出さないけれど
いやーーーな影を落として行った感じです。
やだやだ・笑
Posted by ぼたん at 2020年05月12日 22:51
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