2020年05月12日
袖丈
隠し事をするつもりは無かったけれど
小野寺に遭遇し、不安を覚えたなどと話せば…
……仕事に行くな、と言われそうで…、嫌だった。
とりあえずまあ、まだ、実害は無いのだし。
「おはよー、イツキくん。最終日だねー。今日も頑張ろうね!」
「はい。…あ、追加の商品、来てましたよ。袋に詰めちゃいますね」
明るく元気なミカと、忙しく働いていられるのが良かった。
日曜日なだけあり来客数も多く、ありがたい事にイツキは無用な心配事に捕らわれずに済んだ。
小野寺の件は、もう少し後に、動き出す予定。
「…こんにちは。ハーバルさんって今日でお終いなんですか?…あたし、前にネットで商品買ったことがあって……」
と、向かいのショップの女性店員が声を掛けてくれた。初日から気になっていたが、タイミングが掴めず、なかなか話しかけられなかったと言う。
最初はミカと話していたが、イツキをチラチラと伺い、「……あのー、……モデルとかされてる方なんですか?」と聞く。
イツキはまさか、と首を横にふるふると振る。そして、自分がそんな風に見られている事を、初めて知った。
昼過ぎの少し落ち着いた時間に、佐藤良夫もやって来た。
ミカもイツキも最初は誰なのか解らず、化粧品コーナーをウロウロする中年男性を訝し気に眺めていた。
良夫は偶然ハーバルの前を通りかかったという風に商品を覗き込み、それからイツキを見て、わざとらしく驚く。
「……ああ!この前、服、買ってくれたカレ。……ほら、ここの3階の…セレクトショップで。……このフロアで働いてたんだ」
「………あー、どうもー」
「今、着てるのもそうだよね?……やっぱりブルー系で正解だったね。シャツの袖丈は大丈夫だった?」
どうにか取っ掛かりを作りたいと、佐藤良夫はにこやかにベラベラと喋り、また買い物においでねと、イツキにショップの割引券を手渡した。
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いっちゃん自身は自覚はない所が厄介なんですよね〜
まだ気が付いていないんでしょうな。
この辺でやめておいた方が良いと思います。