2020年05月16日
呼び出し
「……ああ、良かった。間に合った。……ハーバルの子だよね、ちょっと来て貰っていいかな? 部長が呼んでるんだよ」
「……え?……何ですか……」
「…さあ、私は頼まれただけだから」
外へ出る扉の内側のイツキと、すでに外に出てしまっていたミカは……顔を見合わせる。
何の用事かは解らない。けれど、呼び出されている以上、断ることも出来ない。
…一応、先輩のミカは自分が…とポーズを見せるのだが、その実、気持ちはすでに地下のレストラン街に向かっている。
スーツ姿の男は、もう半分踵を返しながら、急かすようにイツキに手招きする。
「早く、早く。……私が怒られちゃうよ!」
本当にちゃんとした用件にしろ、そうでないにしろ、この流れでは断れそうもない。
「…俺が、行くんで…」と、イツキはミカに声を掛け、男の後を付いていった。
当然、「ちゃんとした用件」な筈はない。
男は確かに、内容も解らずに頼まれただけだったが、それは、「ハーバルの男の子を連れて来る」というものだった。
「……んんん、やっぱあたしが行かなきゃダメだったかなぁ…悪い事、しちゃったなぁ…」
「大丈夫じゃない? 結構、どーでもいい用事で呼ばれたりするよ。…ここのポスター、剥がしておけ、とかさ…」
「……そうなのー?」
ミカとユウはそんな話をしながら歩いて行く。
仕事場だったフロアの先に、レストラン街へ降りるエスカレータがある。
フロアはすでに閉店時間。通りに面したそこには透明な扉が下りていて、…ああ、もう終わってしまったのか…と、人が、中を覗き込んでいた。
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