2020年05月21日

土壇場







過去に酷く、心も身体も傷付けられてしまったものは……、例え状況が変わったとしても、それに歯向かう気など起きなくなってしまうらしい。
どうせ駄目だと足が竦む。怯えで身体は硬直する。

他の客をあしらうように、軽口を言って翻弄するような真似が、小野寺相手には出来ない。



車の用意が出来たと、先ほどの柳という男が部屋に戻って来る。
小野寺は静かにイツキを促し、部屋を出る。




「………俺、…いや、……です」

それでもイツキは声を絞り出し、扉から出ようとしなかった。
小野寺は、イツキの二の腕をガシリと掴み、引く。


「……ここは、大人しく言う事、聞いた方がいいと思うよ?」
「……いやです」
「……ふうん?……真面目なお仕事関係の皆さんに、キミの事、話してもいいのかな?」


一番嫌な所を突かれてイツキがどうにも…堪らず、折れそうになったところだった。






「……あー、イツキくん。いたいた!」


視界の先。会議室から社員食堂へ抜けるあたりに、ミカと、一番最初にイツキを案内した男。


それから、黒川の姿が見えた。






posted by 白黒ぼたん at 22:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
小野寺相変わらず嫌な奴ですね!
ミカちゃんいい所に…おー救いの神が来た!
黒川さーん!
Posted by はるりん at 2020年05月22日 06:21
ミカちゃんと黒川さん。
頑張って欲しいですな。
Posted by ぼたん at 2020年05月22日 21:27
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