2020年06月17日
イツキ、管を巻く
朝、黒川が目を覚ますと、部屋にイツキの姿は無かった。
キッチンには、黄身の破れた目玉焼きと、小さなメモ書き。
『出掛けて来ます。遅くならないうちに帰ります』と。
直接、話さなかったのは、言えばまた何だかんだと嫌味を言われることが解っていたからだろう。そこは、黒川も自覚していて
『勝手に出掛けるな。早く帰って来い』と、酷い束縛カレシのようなメールは、送らなかった。
昼間。
イツキは、林田に会っていた。
商社勤めの林田は、担当がハーバルだけという訳ではなく、他にも色々受け持ち
今日はその一つの用事で、東京まで出て来ていた。
イツキの事情は多少はミカから聞いていて、駄目かも知れないと思いつつ…、仕事の合間を縫って昼食に誘ったのだが、意外とすんなりOKを貰う。
「………もしかしてイツキは…、俺に会いたいのかも……」と、林田は鼻の穴を膨らませたのだが、まあそれは、タイミングの問題なだけだった。
とある駅のエキナカのレストランで、待ち合わせる。
「……林田さん!お久しぶりです。午後からもう一仕事なんですか?お疲れさまです。
ああ、東京駅のハーバル、盛況で良かったですよ、秋の常設店の話も聞いてます。
まあ、俺は、どうなるか解らないですけどね。……いえ、仕事はしたいですよ、したいけど……イロイロあって…。
ミカちゃんから何か聞いてますか?
確かに、俺が心配ばっかり掛けちゃうのは解ってるんですけどね。でも、トラブルに遭うのは、俺のせいばっかりじゃ無いですよねぇ?
……半分は、……呼び込んでるんだとは……、思いますけど………」
会う早々、イツキはシラフで管を巻き始める。
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