2020年06月22日
良い方
イツキは、……何か、…怒られるのではないかと……一少し身構える。
西崎あたりなら間違いなく『…外でヤラれてぇのは解るけどよ、大人しくしてろよ。面倒臭ぇ』と言う所。
「社長の言う事は、あまり気にしなくてよろしいですよ。ああ、トラブルを避けるために気を付けて頂くのは勿論ですが……
社長はあなたを手の届く所に置きたいのでしょうけど…、それを聞いてばかりいると、何も出来なくなってしまいますからね。
あまり、社長に対して、委縮しなくて良いのですよ」
一ノ宮がそんな事を言うので、イツキは驚いて目をまん丸にする。
意外だ、と思っている事を一ノ宮も察したのか、言葉を止めて、ふふと笑う。
「…少し、困らせても罰は当たりません。ああ、何度も言いますが、あなたの安全は一番のことですがね…」
「……騒ぎを起こすなって…、………言われるのかと思った……」
「騒ぎの元凶は、社長なのですから。…構いませんよ」
話を終えると一ノ宮は静かに茶を飲み、イツキに、まだ残っていた塩豆大福をお土産にと持たせてくれた。
事務所からマンションへの道を歩いて帰りながら、イツキは一ノ宮の言葉を考えていた。
本当に自分のことを案じ、黒川を気にせず自由にしても良いと、背中を押してくれているのか。
もしくは、何か、裏があるのか……、好き勝手に振る舞わせて、大きなトラブルを引き当て、酷い状況にさせたいのか…。
「…いや、そんなの。……一ノ宮さんに何のメリットもないじゃんか……」
考えても一ノ宮の深意は解らない。
解らないのでイツキは前向きに、一ノ宮の言葉を良い方に捉えることにした。
この記事へのコメント
一ノ宮さんて優しくて黒川と対照的ですけど、どこか謎めいたところがありますよね
Posted by はるりん at 2020年06月23日 06:29
本当は一番の腹黒なのかも知れません。笑
Posted by ぼたん at 2020年06月23日 18:51
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