2020年06月29日

バカンス・3







イツキは一人で電車に乗っていた。
このバカンスに誰かを誘って良いと言われたものの…、誰も、相手がいなかった。

梶原と大野は学校とバイトが忙しくて、急には、予定が合わせられず
ミカも林田も、どうしても仕事が抜けられないと言う。
佐野や清水やでは、もろもろ、問題がありそうな気がする。
……そうなると、イツキには他に、遊びに誘える親しい友人は見当たらなかった。

それならそれで、一人でのんびり過ごすのも良いかもしれない。
ハーバルの時のように、何も解らず見知らぬ土地に放り出されるのとは、違う。
上げ膳据え膳で、ゆっくりと温泉に入り、景色の良い所で気ままに過ごすのも悪くない。




『……お前、一人で向こうに行けるのか?』
『……馬鹿にしてる?マサヤ?……新幹線だって何だって、俺、一人で乗れるよ!』
『へえ……新幹線じゃ、行けないぜ?』


明らかに馬鹿にした様子の黒川。
…新幹線ではなく、特急列車にのるようなのだが…、…解れば、それくらい、出来ない訳ではない。

ルートを調べ、時間を調べ、手持ちのスマートフォンにチケット入れる方法は、一ノ宮に教えて貰った。
一ノ宮は最後まで、自分が向こうまで同行すると言ってくれたが、それは意地で、断った。





「……別に、ぜんぜん平気…」




危うく、同じホームに到着する別の電車に乗りそうになりながらも、どうにか列車に乗り込み、指定の座席につく。
あとは乗っているだけで、目的地に着く。そこから旅館まではタクシーで良い。
イツキはほっと一息ついて、途中のコンビニで買ったお茶を飲む。
流れる窓の景色が、都会のビルから、緑の多い街並みに変わる。




posted by 白黒ぼたん at 23:54| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
いっちゃん、普通の若者ができる事を自分もできるようになってきてますね
今まで籠の鳥?で世間知らずすぎたいっちゃんが、色んなことできるようになるとおばさんはジーンときちゃいます
Posted by はるりん at 2020年06月30日 03:47
自分のsuicaとか持つようになりましたよ!
大人になりましたよ〜〜笑
Posted by ぼたん at 2020年06月30日 21:35
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/187648488
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック